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2013年1月

人形と花と魔術師(6)

 港町の外れにある、酒場。
 そこに、長いマントを羽織った男が、カウンターに座る。
「注文は?」
「酒を。……あと、情報を」
 男の要求に、店主は小さな溜息をつく。
「情報っていっても。ここは、単なる小汚い酒場だ」
「花の話があると、聞きました。なんでも、珍しい花だとか」
 男が言うと、店主はようやく「ああ」と納得したように頷いてから、酒を男の前に置く。
「どこかのお偉いさんが、虹色の花を咲かせているとかいうやつかい? あくまでも、噂でしかないぞ」
「それで構いません」
「明日、だったか。週に一度しか出ない船でいく離島に、妙な学者が住み着いているらしい。それも、村から離れた山奥に、ひっそりと住んでいるらしい」
「そこに、花が?」
「と、言う噂だ。実際に行って、花を手にしているのを見たわけじゃない」
「なるほど」
 男は頷いた後、酒の金を置いて酒場を後にする。店主は「やれやれ」と小さく呟き、気付く。
 酒には、一切口をつけた後が無かった。

 エイシュは港を見つめる。
「明日、明日ですね。ようやく、花を手に入れられるかもしれません」
 ティルトの顔が浮かぶ。
 花を見て、なんと言うだろうか。
 見つけたのか、と驚くだろう。そして、苦笑しながら「参った」というかもしれない。
 エイシュは誇らしげに笑う。
 自然の理を覆したか、と笑うだろう。笑って、あの暖かな手で、頭を撫でてくれるかもしれない。
「ティルト」
 小さく呟き、エイシュはその場に腰掛ける。
 足元で、ざざん、ざざん、と波が打つ。ティルトに聞いてはいたが、やはり実際目にすると、不思議な現象だ。
「そうだ、次はティルトと一緒に見るのも良いかもしれませんね」

――ぎい、ぎい。

 胸の歯車が、軋む。
「帰ったら、ついでに歯車を変えてもらわないといけませんね」
 エイシュは苦笑する。金属は確か、潮風に弱いはずだ。
「怒られそうですね」

 ――潮風? 何でそんなものに当たったんだ?

 ティルトの呆れた顔が浮かぶ。
「だって、枯れぬ花を見つけたかったから」
 エイシュは言い訳をする子どものように言う。
『枯れるから美しいんだよ、花は』
「自然の理を覆さないと」
『覆らないんだよ』
「覆ります。ほら、僕は、もうすぐ、枯れぬ花を、手に」
『枯れぬ花?』
「ほら、教えてくれたでしょう? 僕は、あの、話が、一番」
『そうか』
 ティルトが笑う。優しく、笑う。
 エイシュも、笑う。つられて、笑う。

 二人、笑う。

――ばしゃん。

 翌日。
 酒場の店主は、昨晩訪れたマントの男を捜す。
 酒を一口も飲んでいなかったため、酒代を返してやろうと思ったのだ。
 離島行きの船に乗ることは分かっていたから、見送りついでに。
 だが、男はどこにもいなかった。
「行くのをやめたのかもしれないな」
 店主は肩を竦め、店に戻る。
 港からは、出航を告げる汽笛が鳴り響いていた。

<永遠を胸に・了>

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これにて「人形と花と魔術師」完了です。
長々と、だらだらと書いてすいません。
読みづらいかもしれません。
あと、すかっとしない終わりかもしれません。
これも「枯れぬ花」「有限の魔術師」から出た一つとして捉えて下さると、嬉しいです。
別にこれが公式とかそういうわけではなく、自分がこんな感じかなぁ、と書いただけですので。
お付き合いくださり、ありがとうございました!

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明けましておめでとうございます

Kaito2013
今年も宜しくお願いいたします。

KAITOさんバージョンしか作れませんでした。
ごめん、いろは様。

今年もばりばりというか、マイペースに、曲を作って歌っていただこうと思っております。
時間が空いた際にでも、視聴してくださると嬉しいです。
二枚目のCDも、出せたら良いな。出来たら良いな。

それでは、皆様にとって素敵な年となりますように。

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