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人形と花と魔術師(2)

2.
 アステラのいなくなった家は、静かだ。取り残された魔術書や小物が、取り残されてしまっているようにも見える。
「そうだ、魔術」
 ティルトは呟き、魔術書に手を伸ばす。
 嘗てアステラが宮仕えをしていた頃、自分は半永久の魔術師と呼ばれていた、と言っていたのを思い出したのだ。
「半永久の魔術を作り上げるのが上手いのだと、自慢していたっけ」
 少し照れたようなアステラを思い出す。
 口元をほころばせ、どこか誇らしそうにしていたアステラ。
 ティルトはいくつかの魔術書をぱらぱらと捲りながら、思い返す。
(でも、アステラは永久を得られなかった)
 どうして半永久なのかと、アステラに尋ねた。
 どうせなら、永久の方が良いではないか、と。
 しかし、アステラは静かに微笑んで答えるのだ。
――永久など、何処にも無いのだ。
(ある筈だ)
 探せば、見つかる筈だとティルトは確信している。
 もしなければ、自ら魔術を構成すればよいだけのこと。
 永久となるものが、必ず存在する筈だ。
「そうでなければ、寂しい」
 ぽつりと呟く。
 既にアステラは居ない。半永久だったから。永久じゃなかったから。
 じわ、と溢れようとする涙を袖で拭う。
「……あ」
 ティルトは、とある一ページで指を止める。
 そこに書かれていたのは、人形に魂を宿す、というものだ。
 精神集合体を小さな人形に宿し、使い魔として使役するのだという。
「人が死ぬのは、肉体が朽ちるからだ」
 ぎゅ、とティルトは魔術書を握る。
「人形ならば、朽ちない。朽ちた部分を交換すればいい。そして、それを応用すれば」
 ティルトは唇を結び、魔術書を片手に術式を構成し始めた。
 思い描くのは、魔術書にあるような、小さな人形にそこら辺の精神集合体を宿す、という作業ではない。
 朽ちぬ体を持つ、人に近しいもの。
「できる、必ずできる」
 ティルトはその日から、魔術構成に夢中になった。
 最低限の日常生活をこなし、あとはひたすらに術式を構成してゆく。
 己の体の生理現象ですら鬱陶しく、眠らなければ動かぬ頭がもどかしくなるほどに。

 人形が完成したのは、アステラの死から15年が経過してからであった。
 術式を組み込み、人の形を成した人形。
 目を閉じて結界内に座っているその姿は、一見して人形とは分からぬ。
「……起きて」
 問いかけると、静かに人形は目を開いた。じっとティルトを見つめた後、ゆっくりと立ち上がった。
「おはようございます」
「おはよう。気分はどう?」
「大変よろしいです、マスター」
 滑らかに喋る口調に、ティルトは微笑む。
「名前を与え開ければ。何がいいかな?」
「名前はマスターがお決めください」
「じゃあ、エイシュ」
 エイシュ、と名づけられた人形は、頷いた。
「了解しました。以後、私はエイシュです」
「感想は?」
「私がエイシュである、という認識です」
 ティルトは怪訝な顔で、エイシュを見つめる。
 よく見れば、エイシュに表情は無い。無表情のまま見つめる顔は、目を閉じていた人形そのものである。
(感情が、欠落しているのか)
 少しだけ、がっかりする。
 仕方の無いことだとは、思っている。どれだけ魔術書を漁ろうとも、自らの術式を構成しようとも、精神の動きまでは組み込むことができなかった。
 一から作り上げたのだから。
(でも、これからだ)
 ティルトは心に決める。
 エイシュは見た目こそ違うが、生まれたてである。いわば、何も知らぬ赤子と同じ。
「私が、お前を育てればいいだけだ」
 ティルトはそういい、エイシュの頭を撫でる。
 かつて、アステラに言われ、されたように。

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第二話です。
ちゃんと続きがかけました。わーい。
あとは最後までいけたらいいな。がんばります。
出さなければならない人物は出しているので、あとはマスターと人形がキャッキャウフフするだけです(笑)

ぼちぼちやりますので、よろしくお願いします。

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