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人形と花と魔術師(1)

1.
 暖かな布団の中、うとうととティルトは目をこする。
「もう、眠るがいい」
 魔術師アステラは、ゆるりとティルトに声をかける。
 ゆらゆらとアステラの近くで揺れているランタンの火が、目を閉じても追いかけてくるかのようだ。
「眠いけど、眠くない」
 矛盾している答えを返すと、アステラは苦笑交じりにベッドへと近づいた。
「話をご所望か」
 こっくりと頷くと、アステラは「よいしょ」と小さく呟きながら、傍においてある粗末な椅子に腰掛ける。
「ドラゴンの卵の話はしたかな?」
「暖めすぎてゆで卵になったやつなら、一昨日聞いた」
「では、突如踊りだす不可思議な人形の話は?」
「螺子を妖精が巻いていたのなら、一週間前に」
 ふむ、とアステラは頷く。
 なるほど、夜話を毎晩聞かせているせいで、大分同じ話をしてしまっているようだ。
「私の話を、君は殆ど聞いてしまっているようだね」
「聞いたことの無い、話がいい」
「これは手厳しい」
 くつくつと笑い、優しくアステラはティルトの頭を撫でる。
「では、永遠に咲くという、枯れぬ花の話をしよう」
 ティルトは微笑み、頷く。
 アステラは笑い返した後、静かに口を開くのだった。

――人は、死ぬのだろう。
 花に囲まれているアステラを見つめ、ティルトは思う。
 夜話を強請ったのは、いつまでだっただろうか。
 十年前は、確実に聞いていた。毎晩楽しみで、色んな話を聞いて、想像して、夢の中で続きを見たりしていた。
 いつからか、夜話を聞かなくても眠れるようになった。そしてまた、アステラも話さなくなった。
 口数が減り、ぼーっとする回数が増え、だんだん足元がおぼつかなくなった。
 ティルトがアステラの背を追い抜いてしまったところで、アステラは突如として倒れ、帰らぬ人となってしまった。
「アステラ」
 ぽつりと問いかけるも、アステラからの返事は無い。
 昨日までは、ゆっくりとではあったものの「なんだい?」と返事があったというのに。
 アステラは返事をしない。
 アステラは動かない。
 アステラは、もう、アステラではない。
「……これが、死」
 ティルトは花の中に埋もれている、かつてアステラだった体を見つめ、それから蓋を閉めた。
 家の裏山に箱を担ぎ、山頂に埋めた。
 慰問客などいない。森深くに住んでいた二人は、日々魔術を鍛錬し、あるものを口にし、稀に街に出て過ごしていたのだ。
 殆ど、他者と交わることなく。
 本来ならば、アステラはティルトと共に生活することすらなかったのだ。
 幼いころ、ティルトがこの森に捨てられることさえなければ。
「一人、朽ちることはなかったんだ」
 ティルトがいるからこそ、アステラの亡骸はこうして弔うことができたのだ。寂しく、骨になることもなく。
「自分の存在が、アステラにとっては、きっと、救いだった、に、ちが」
 ティルトは嗚咽をあげる。
 言葉にならぬ言葉を吐き出し、叫び、涙を流す。
「人は、人は何故死ぬ!」
 うおおおおお、とティルトは吼えた。
 アステラからの返事は、無かった。

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「枯れぬ花」「有限の魔術師」の派生ノベルです。
性別については、適当に妄想してください。
どっちでもいいように書くつもりです。

ふと思いついたので、まとめる意味でも書いてみます。
ちゃんと最後までいけるよう、がんばります。
ブログ更新自体が遅いし、何かこういうのを作ったら更新するような気がしますしね。
うん、自分、だめなやつ(笑顔)

ちょっといろは様にハァハァしてくる。

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